生臭坊主!? “僧侶プロレスラー”の自由すぎる説法/阿部史典

阿部史典というプロレスラーをご存知だろうか。昨年2015年に名古屋のプロレス団体スポルティーバでデビューしたばかりのレスラーだが、なんと彼はお坊さん! 変わった人間には目がないDropkickとしてはさっそく仏の道に仕えながらプロレス道を歩み始めた経緯をうかがったが……この僧侶は実在する!

 

 

――阿部選手はプロレスラーでありながら、お坊さんなんですよね。


阿部 そうっすね。いまはプロレスに専念してるんですけど、お坊さんですね(手を合わせながら)。


――ありがたや、ありがたや(笑)。本日はなぜお坊さんがプロレスラーになったのかをおうかがいします!
 

阿部 プロレスが好きになったのは小学生のときなんですよ。兄貴が友達からPS2の『エキサイティングプロレス』を借りてきて。WWEのゲームなんですけど、その中でTAJIRIというコテコテの日本人レスラーが毒霧を吐いたり、街で戦ったりしてて。「こんなことは現実世界であるのか?」という驚きがありまして。


――それまでプロレスというジャンルを知らなかったんですか?
 

阿部 『エキサイティングプロレス』でプロレスのことを初めて知ったんですよ。で、フジテレビの深夜にWW中継をやってることもわかって。


――そんな番組がありましたねぇ。


阿部 その番組で高山善廣さんがコメンテーターをやってたから、てっきり高山さんはWWEのレスラーだと勘違いしてて。中学のとき高山さんと街でばったり会ったときに「あ、WWEの人だ!」って握手してもらいましたから(笑)。


――90年代は『ファイヤープロレスリング』からプロレスに入るケースが多かったですけど。いつの時代もゲームは強いんですねぇ。


阿部 そうすると実際にプロレスをやりたくなるじゃないですか。高円寺にスネークピットというジムを発見して「ここに通えば、毒霧やムーンサルトプレスを教えてくれるのか!?」って大興奮ですよ。


――宮戸優光さんのスネークピットはWWEのカラーは皆無ですけど(笑)。


阿部 そんなことは全然知らないから、ランドセルを背負ったまま学校帰りに行ってみたんですよ。宮戸さんがいて見学させてもらったんですけど、『エキサイティングプロレス』とは違うじゃないですか。飛んだり跳ねたりするわけではないので。


――スネークピットはプロレスの基礎を教える場所ですね。


阿部 それでも入会したんですけどね。


――あ、入会した(笑)。


阿部 その頃は鈴木秀樹さんや城アキラさん、井上学さんがいて。鈴木さんとはいまでも仲良くさせてもらってますけど。


――お坊さんプロレスラーはキャッチ・アズ・キャッチ・キャンだった!(笑)。


阿部 そこまでみっちり習ったわけじゃないんですけど。小学生からすると「キャッチ・アズ・キャッチ・キャンってなんだ、それ?」って感じで。「まず足の構えはこうだ!」「……足の構え? バズソーキックは……?」って(笑)。


――俺が知ってるプロレスはこんなんじゃない!と(笑)。


阿部 ハンドスプリング・エルボーを教えてもらえるもんだとばかり思っていたら、手四つの動きから勉強ですよ。練習が終わってから、柔らかいマットの上で鈴木さんとプロレスごっこをやったりしましたけど。あ、ちなみに一番最初に鈴木秀樹からサインをもらったのは俺ですよ。鈴木さんがIGFでデビューすると聞いて「じゃあサインください」って。鈴木さん、おぼえてないと思いますけど(笑)。


――同じくIGFに出ていた定アキラ選手はプロレスをやめちゃったみたいですね。


阿部 アキラくんはボクの一個上なんですけど、高1でIGFには出るし、もうボクとは全然違うわけですよ。根っからのギャングですし。


――アキラ選手はかなりワルかったと聞きますね。


阿部 不良やヤンキーなんじゃなくて、そのうえのギャングなんです。ギャングがキャッチ・アズ・キャッチ・キャンを使うんですからそりゃあ強いですよ!


――フハハハハハ。そんな環境にいたら阿部さんもプロレスラーになろうと思ったんじゃないですか?


阿部 いや、高校生になると現実が見えてくるじゃないですか。当時のボクは49キロくらいで、身体は骨しかないんですよね。


――49キロ!?


阿部 身長や体重がないし、「プロレスラーは夢のまた夢だな……」ってことでそこで一回諦めたんです。スネークピットに通ったのは4年くらいですかね。高校も1年くらいで退学になって。


――どうして退学したんですか?


阿部 6回くらい停学になったんですよ。楽しいことをやりすぎたら。


――もしかして「キャッチ・アズ・キャッチ・キャンを使いこなす不良」だったんですか?(笑)。


阿部 いや、不良だったわけじゃなくて、ただ不幸なんですよ。友達がタバコを吸ってる現場に一緒にいたら、俺だけ捕まったりとか。ホントそんなもんなんですよ。神社で焚き火をしてたら騒ぎになったり。


――どちらも火が関連してますね(笑)。


阿部 燃えるものが好きなんスよ。


――放火魔って火の魔力に引き寄せられると言いますからねぇ。


阿部 放火魔と結びつけてほしくないですけど(笑)。高校以外のことが楽しくなっちゃったこともあって、高校のときから渋谷のバーで深夜3時までバイトしてたんです。身長150センチ体重50キロくらいの奴がバーテンをやってるって、かなりエグい画だなとは思うんですけどねぇ。


――なんだかボッタクリっぽいイメージですね(笑)。


阿部 未成年だったからアルバイトの事情がわかってなくて、お店から毎月3万くらいポンを渡されるんですよ。いま思えばそれが給料なんですけど、高いのか安いのかわからなくて、とりあえず「ありがとうございます」みたいな。ある日いきなり「明日で店おしまいだから」ってメッチャ未払いのまま終わったんですけどね。 


――そんな生活をしてたらご両親が心配するんじゃないんですか?
 

阿部 母親もそんなに心配してなくて。母ちゃんはけっこう純粋な性格なんですよ。母親は葛飾区で喫茶店をやってるんですけど、スピリチュアルなものをを信じやすくて。嘘くさいセールスマンを引き寄せるというか、マッキーで「阿弥陀様」「観音様」の名前を書いたベニヤ板をどこからか買ってきて、家の中に貼ってあるんですよ。「母ちゃん、これなに?」「これで家が浄化されるのよ!」って。


――霊感商法の類ですねぇ。そんな息子さんがお坊さんになるなんて面白い。


阿部 いや、母親の実家がお寺なんですよ。
 

――えええええええ!?(笑)。


阿部 それなのに怪しいものを信じやすいんですよ! 

 

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