MMA原理主義者が吠える!「MMAとキックや柔術が同格?」/大沢ケンジ

和術慧舟會HEARTS総帥にしてAmebaTV格闘技チャンネルで解説を務める大沢ケンジ師匠の格闘技談義! 今回のテーマは……高崎計三氏の那須川天心記事に噛み付いた!?

 

 

大沢 年末のRIZINのカードはどう思います?

 

――人によって、興味があるカードと興味がないカードに分かれるなと思います。

 

大沢 ですよね〜。ボクも正直言って、こっちには興味はあるけど、あっちには興味がなかったりします(笑)。

 

――何が「あっち」で、どれが「こっち」なのかは察しがつきますけど(笑)。「こっち」にまるで興味がない人もいっぱいいますね。

 

大沢 でも、RIZINって「なんでこんなカードを組むんだ!」「アイツを出せ!」とか文句を言われがちな面もありますけど、いま現実的に使える選手を集めて、興味のあるカードを組んでると思うんですよね。

 

――ベストではないけど、ベターという感じで。

 

大沢 やっぱり興行としてはお客も視聴率も狙わなきゃいけないですし。じゃあRIZINだけがそういう路線かというと、ベラトールは完全に地上波向けですし、韓国のROAD FCなんかも狙いに走ってるところはありますよね。

 

――こないだのROAD FCのメインイベントは、右目に視聴障害を持つ50歳のアクションスターの試合でしたね。

 

大沢 UFCにしても最近の動向や関係者の話を聞いていると、ベラトールやRIZINっぽい感じになりそうじゃないですか。

 

――興行重視主義に傾いてますね。

 

大沢  名前のある選手は3カ月おきに試合を組んでくれるけど、そうじゃない選手はしばらく試合がなかったり。ドナルド・セラーニとかは人気があるからすぐに試合が組まれて。

 

――UFCもPPVが売れる選手、視聴率の数字を持ってる選手をプロデュースしていく方針に切り替えつつありますね。

 

大沢 これまでのUFCはMMAをスポーツ化するというロマンを抱えていたんですけど、新体制は芸能マネジメント会社がオーナーになったということで、ショービジネスとして捉えてるわけですよね。人気のある選手、華のある選手をどんどん使っていくんだろうなって。

 

――旧体制のときでも、キム・ドンヒョンが勝っても勝ってもチャンスをもらえないのは判定が多いだからって反省して、アグレッシブなスタイルに変えたくらいですからね。それがより顕著になるという。

 

大沢 だから興行が重要視されるのはRIZINに限った話じゃなくて。そこには団体によって程度が違ってくるけど、結局オリンピックスポーツだってテレビを意識したルールになっちゃうんですよ。柔道だってなんだってルールは変わってきてるじゃないですか。

 

――どの競技も見る側を意識してますね。

 

大沢 つまりルールを動かすか、選手を選ぶかの2択になってる。アマチュア競技は選手を選べないからルールで動かして、プロのほうがルールを動かさないで選手を選んでるってことですね。アマチュアだって求められる世界なんですよ、いまは。

 

――そうするとプロはただ勝つだけじゃなくて、そこに何かプラスアルファが求められるわけですね。そのプラスアルファは団体によって違ってくるけど、向いてる方向性は一緒で。

 

大沢 結局、誰かに評価されないとダメってことですよね。これは現役時代の自分にも強く言いたいけど(苦笑)、やっぱりただ勝つだけじゃダメなんだよなあ……って。とくにこれから先のMMAはその傾向が激しくなると感じてますよ。俺も関係者に「この選手、どうですかね?」って売り込みの話をするんですよ。でも、いまは外国のプロモーションでも、何か引っかかるものがないと日本人は難しいって言われますから。

 

――加藤(久輝)選手もジョー・シリングの相手としてベラトールに呼ばれたけど、そこでインパクトを残し続けたから継続参戦できてますね。

 

大沢 そういうチャンスにガツンと結果を残せるかどうかってことですよね。それは圧倒的な強さだけじゃなくて、キャラクターや試合内容でもいいですし……判定でも勝ちたいというなら、ほかに何かインパクトを与えないといけない。この職業で食わないつもりなら、ただ勝つだけでいいんですよ。でも「食わせてくれ!」「有名にしてくれ!」「メジャーなイベントに上げてくれ!」というなら求められますよね。

 

――「じゃあ、どんな試合をやってくれるのか?」と突きつけられるわけですね。

 

大沢 強さだけで食っていける時代はもう来ないし、この先はないぞ!ということですね。でも、いまはまだいいほうですよ。ボクは現役の一番いい時期って、日本の格闘技界は真冬だったんですよ。DREAMとか日本のメジャーイベントがなくなっていって、本当に怖かったですよね。当時はまったく食えませんでしたからね。

 

――川尻選手も将来が不安になったと言ってましたねぇ。

 

大沢 その当時と比べると、いまは多くの選手や試合を発信できる環境があるから、工夫次第だと思いますよね。たとえばいまはほとんどの団体がAbemaTVで流れますし。

 

――以前はライブ中継がほとんどなかったですね。

 

大沢 うまく利用できればチャンスですよね。そこはテレビタレントと同じで、変なアピールをやって大滑りする奴も出てくると思いますけど(笑)。格闘家なんですから、強くなきゃいけないのはあたりまえだけど、メジャーに上がりたいならプラスアルファはあたりまえってことですね。

 

――パウンド・フォー・パウンドと呼ばれるUFCフライ級王者デメトリウス・ジョンソンが一番稼いでるわけじゃないですし……。

 

大沢 逆に言えば、DJも強さだけであれだけ食えるんだって証ではありますから。コナー・マクレガーほどじゃないにしろ稼げるじゃないですか。飛び抜けて強ければUFCも放っておかないですよね。

 

――DJはPPVボーナスを含めると億はいってそうですし、強さも抜き出ればいいってことですよね。ファイトマネーの水準は上がってますし。

 

大沢 それに活躍して目立てば、日本人選手はRIZINにオファーされやすい。だからメジャーの舞台を目指してたり、今回年末のチャンスをもらった若手には、強いプロ意識を持って試合に臨んでほしいですよね。ただ勝つだけではその試合に勝っても、格闘技界では生き残れませんよ。凄い試合をやって、いっぱい稼いでくれ!(笑)。


――それでその年末RIZINの大予想を……。
 

大沢 (さえぎって)いや、その前に今回はどうしても声を大にして言いたいことがあるんですよ。

 

――なんですか?


大沢 Dropkickに那須川天心選手のRIZIN参戦の記事が載りましたよね。

http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1157314


――ライターの高崎(計三)さんが那須川天心の凄さを語るインタビューですね。


大沢 那須川選手を引っ張ってくるなんて、RIZINはとんでもない仕事をしましたよねぇ。これは凄いことですよ! 那須川選手はMMAというジャンルでも凄い可能性を秘めてるというか。だって18歳からMMAを始められるんですよ? ボクが始めたのは23歳ですし、ジム経営してわかるのは、いまでもMMAをやる人って遅めの年齢なんですよね。それでいて那須川選手はあの若さで超一流の打撃を身につけているし、身体能力も凄いじゃないですか。これでレスリングや柔術を学んだら、チャンピオンは夢じゃないと思います。
 

――年末のRIZINだけじゃなくて将来が楽しみなんですね。


大沢 焦らないでしっかり勉強してほしいですね。勝負強さもあって頭もいいから、キック無敗でMMAに転向してUFCで活躍しているスティーブ・トンプソンみたいになれますよ。


――なるほど。大沢さんの言いたいことは「那須川天心選手が楽しみだ!」という。


大沢 いや、違いますよ。ここから本番なんですけど……あの高崎さんの記事で「MMAはキックの上なのか」とか、橋本欽也さんがこの記事の感想として「柔術の世界王者とMMAのチャンピオンは同列なのに、なぜかMMAのチャンピオンの方が格上に語られる。例えばMMA王者がムンジアル出ても勝てないし逆もまた然り。柔術とMMA、キックとMMAも同じで別競技なんだからそこは尊重して欲しい」ってツイートしてたじゃないですか。賛同する読者の声も多いですよね。


――大沢さんも同意なんですね。


大沢 …………は? 
 

――は?


大沢 いやいや、冗談じゃない。MMAのチャンピオンが一番格上なんですよ!!(ドン)。


――ファッ!?


大沢 まことに申し訳ないんですけどぉ、MMAとほかの格闘技を同列に置いてもらっちゃあ、困りますよぉ!(ドンドン)。


――げ、げ、げ、原理主義者だあ!!!!!!!!!


大沢 MMA原理主義者ですよっ! これから読む人によって気分が悪くなることを言うかもしれませんけど、ちょっと聞いてください。


――うーん、師走に2週続けての原理主義者トーク……。


大沢 あのですね、多くの人間が格闘技を始める理由って「強くなりたい!」だと思うんですよ。そのために何か習おうとして、身近にあった格闘技がキックや柔術だったりする。もしくは、いきなりMMAだと難しそうだから、ほかの競技を選んだ人間が多かったと思うんですよね。


――以前はいまほどMMAのジムが多くなかったですね。


大沢 でもね、強くなろうと思ったら間違いなくMMAなんですよ!(ドンドン)。自分のことを話せば、キックや柔術とかほかの格闘技を選べる環境にはあったんですよ。でも、一番強くなりたいと思ったらMMAからは逃げられなかったんですよね。強くなりたいと思ったならば、いずれはMMAの世界に来なきゃいけないんですよ! それが格闘家の運命!!
 

――大沢さんにこうして怒鳴られて思い出しましたけど。1993年にUFCが始まったときは「ついに世界最強が決まるかもしれない!?」というワクワクがありましたねぇ。


大沢 そこなんですよっ! 
 

――“MMA幕府”が設立されたことで、世界中の格闘技がドンパチやっていた戦国時代の幕が降りたので平和ボケしてました。


大沢 UFCが始まったときのあのドキドキ感は忘れてないですよぉ。ノールールで誰が一番強いのかを見たかったんですから、結局格闘技がそこからは逃げられないんですよ。ルールがなければないほど、その格闘技が最強だと思ってますね。


――ノールールに一番近い格闘技がMMAだということですね。


大沢 最強を目指すならMMA。そこは自分の人生の中で決して揺らぐことはないですね。そうじゃなかったら、じゃあなんのためにMMAをやり始めたかわかんなくなっちゃうんですよ。ボクは高校時代、ボクシングが最強だと思ってたんですけど、UFCが出てきて「あ、最強はコッチだな」って考えを変えたんです。ボクシングのチャンピオンのほうがカネを稼いでるけど、自分の夢としては強くなりたいからMMAを選んだ。そのMMAがほかの競技と同列にされるのは、自分のやってきたことを否定されることと同じなんですよね。


――ほかの格闘競技がMMAの下だと思われたくない! という感情に共感はできませんか?


大沢 あー、そこはわかります。そこは競技の愛情やプライドですよね。


――それと、MMAに触って負けるとジャンルが汚れてしまう感覚もあると思うんですね。それはプロレスファンのトラウマとしても残ってるんですけど。


大沢 その気持ちは凄く理解できますね。初期UFCの頃から自分が信じたジャンルが軒並み倒されちゃった感覚を味わってきた人も多いですし、逆に柔術はあらゆる競技を倒して名を挙げましたよね。そこで「柔術が一番だ!」って誰もが思っていたら、MMAという自体の技術が洗練されていって、柔術すらも飲み込まれてしまったわけですけど。


――昔は競技vs競技でしたけど、いまはMMAというジャンルに飲み込まれてしまう。たとえばキックボクサーがMMAに出て勝っても、それはキックがMMAに勝ったという話にはならない厄介さがありますね。


大沢 いまはそうなっちゃいましたけど、ホイスがUFC1で簡単に負けていたら、柔術はここまで広まらなかったと思うんですよ。他競技をぶっ倒したから「柔術が最強!」というイメージが広まったわけじゃないですか。あのときの柔術は、ほかの格闘技と同列に扱っちゃダメだったんです。


――かつての空手やボクシングも最強という看板があったから求心力があったわけですし。


大沢 強くなりたいから空手やボクシングを始めただろうし、その話でいえば、いまはMMAが一番格上なんですよ。ほかの競技が楽しくて、そのジャンルで一番になりたいという人もいると思うんですね。最初から柔術をやりたくて始めた人が「柔術のチャンピオンとMMAのチャンピオンは同列だ」と主張するのはよくわかるんですよ。ただし、それはジャンルとして見ればの話ですよね。「強くなりたい」という理由で格闘技を始めた人間には「それは違う!」と言いたいです。そもそも格闘技をやる根本の理由を思い出してほしいですよ。さらにファン目線でいえば「誰が一番強いのか」という興味があって見てるわけですよね。細かい技術を見るよりも、根っこには「強いのは誰だ?」があるわけですから。ノールールに一番近いMMAを上に置くのは自然だと思うんですよね。


――MMAは格闘技の王様だと。


大沢 さらに言えばですよ。野球やサッカーは、何かしらの遊びにルールを付けてゲームやスポーツとして昇華されたものですよ。根本は遊びなんです。だからサッカーや野球のチャンピオンは同列と言えば同列。だけど、レスリングや柔道なんかは、そもそも昔の人間が生き残るためや、強くなるためには「ここの技術が重要なんじゃないの?」って細分化されていったもの。それぞれ技術が特化した先なんですよね。


――いわば局面型格闘技ですね。


大沢 全局面的な格闘技に目線を向きながら、それぞれ競技になっていった。いまは言ったのは根本的な話だから「いやいや、俺は違うよ。そんなつもりで格闘技をやってないよ」と言われたらそれまでなんですけども。強さは関係なく競技を始めた方は同列でいいですよ。でも、レスリング自体に興味を持って始めたならともかく「強くなりたい!」っていうことで格闘技を始めたなら、MMAのチャンピオンを目指さないといけないんですよ。わかります!?(ドン)。 


――この熱さ、90年代特有の匂いがする!(笑)。


大沢 もっと根本的な話をすれば、どんな動物でも競技として成立するのは、100メートル走とMMAですよ。足の速さにケンカ。


――要するに動物の本能ですね。


大沢 動物は野球とサッカーはやらないですけど、この2つの本能は生きていくためには重要。動物として本能を競う100メートル走とMMAは、すべての競技の中の王様だと思うんですよね。


――本能に訴えかけてくるものがある。そういえば、小学生のクラスの人気者は、足の早い奴とケンカの強い奴ですね(笑)。


大沢 そうそう、あとは頭の良い奴もですね。頭が良ければ相手を落ち着かせたり、ケンカを回避したりもできます。生き残るために必要な生存本能を計るもの、それは100メートル、頭の良さ、そして取っ組み合い。この3つがキング・オブ・イキモノですよ!


――キング・オブ・イキモノ(笑)。
 

大沢 もうひとつマラソンもありかなって思いますけど、動物はそんなに長く走る意味がないし、その瞬間を逃げ切れればいいですから。あと拳銃や道具を使い始めたら、それは戦争になるから(笑)。


――MMAはノールールじゃないだろうという反論があると思いますが……


大沢 目潰し、金的あり、噛みつき……ということですよね。仮に噛まれたり、耳を引き裂かれても戦えるって、もはや根性の世界じゃないですか。そんな根性を持ってる奴が何を習えば一番強くなるかと言えば………MMAなんですよ!(ドン)。


――そういえば、谷川貞治が「MMAファイターは戦国時代だと生き残れない!あっという間に殺される!!」とか言ってましたけど、ジョン・ジョーンズあたりが武装訓練したら戦国無双しそうですよね(笑)。
 

大沢 こんなに言いたい放題で申し訳ないですけど、シンプルに何が凄いのかは認めてくださいって話なんですよ。那須川選手にも「なんで格闘技を始めたの?」って聞きたいです。もしかしたらお父さんに言われて格闘技を始めたかもしれない。でも、強くなりたいという動機があったならば、ぜひMMAに来なよと言いたいですね。ルンピニーのチャンピオンを倒しちゃいましたし、キックでやることをやりつくしたならば。


――18歳でやることがほぼないって、おかしいんですけどね(笑)。


大沢 そんな那須川選手がいまMMAに来ても、そこそこレスリングができる日本人MMAファイターとやったら、まだMMAの経験がないですから、残念ですけど負けちゃうと思うんですね。キックボクシングで一番強いけど、MMAだとそれが現実じゃないですか。でも、那須川選手がこれからMMAを学んでいけば、最強になれる可能性は凄く高いわけです。もっともっと強くなってほしいですね。


――というわけで、ほかの競技の原理主義者の方、大沢さんへの挑戦をお待ちしております(笑)。

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